DXと3次元計測 近年、建設業界では DX(デジタルトランスフォーメーション) が急速に進んでいます。その中でも特に注目されているのが、 3次元計測技術の導入です。従来は手間と人員を要した計測作業に、モバイル端末を活用することで大きな変革が起きつつあります。 特に、スマートフォンやタブレットといった 手軽に扱える端末 を使った計測は、これまでの作業スタイルを根本から変える可能性を秘めています。
これまで維持工事等の出来形管理においては、明確な基準等がありませんでしたが、特に定めのない場合、 面管理や断面管理のテープによる計測に代えてモバイル端末等を用いた計測が可能になりつつあり、 県の公共工事において「モバイル端末等を用いた計測」の活用が推奨され始めています。
これは、国土交通省が進めるICT施工の流れを背景に、スマートフォンやタブレットに搭載された LiDAR 機能 を出来形管理に活かす取り組みの一環です。
3次元計測技術を用いた出来形管理要領(案)
https://www.mlit.go.jp/tec/constplan/content/001880735.pdf
弊社では本取り組みの実証実験として、寿建設株式会社と協力し、国道メンテナンス業務に iPhone/iPad用の3Dスキャンアプリ「Scanat」 を導入。危険がある法面などを現場で3Dモデル化し、 効率的な維持・補修作業を実現しました。
主な成果
*計測作業の大幅な時間短縮:延長約70mの法面がたった5分で撮影可能
*労働時間は月36時間から月15時間へ(約58%の削減)
*オンラインでの情報共有による移動の削減:現場確認にかかる移動や再訪問の必要が減少
* データ品質の向上:3Dデータによって経験に依存しない均質な記録が可能となり、発注者との認識ずれも解消
働き方改革の実現に向けた効率的な建設工事の促進事業に係るモデル事業事例集 (P60~P63 を参照ください)
LiDARはレーザー光を利用して対象物までの距離や形状を瞬時に計測し、高精度の点群データを取得する技術です。 これにより、従来のテープ計測と比較して『 作業時間を大幅に短縮』『 人員を削減 』『現場の安全性を向上 』といった効果が期待されます。
担い手不足が深刻化する建設業界において、この効率化と安全性は大きな意味を持ちます。
モバイル端末を用いた3次元計測は、特に 座標管理を必要としないケース に適しています。
例えば 舗装補修面積の計測 橋梁やトンネルの補強シート面積の計測 こうした作業では、従来のテープによる測定に代わってモバイル端末での計測が可能となり、実際に現場での利用が広がっています。
新しい技術を導入する上で最も大切なのが 精度管理 です。現場では以下の基準が求められています。
・寸法精度:2点間の距離で±10mm以内
・測定精度:2点間の距離で±10mm以内
・計測密度:対象物の輪郭を明瞭に示せる程度
そのため、計測ごとに既知寸法の標尺を設置し、結果との差が ±10mm以内 であることを確認する運用が推奨されています。 これにより、手軽さと信頼性を両立できます。
弊社で開発された3Dスキャンアプリ「Scanat」は、今年の5月から既に国道等の維持改修工事で活用され、データを用いて発注者へ提出することが可能となっているので、引き続きインフラ老朽化の課題に貢献できるように3次元計測技術の普及による建築・土木業界の省力化、効率化を進めていきます。
引き続きどうぞよろしくお願いいたします。
参考説明 3次元計測技術を用いた出来形管理の活用手引き(案)説明動画【第1編 共通編】 https://www.youtube.com/watch?v=dGFo22YftqU
3次元計測技術を用いた出来形管理の活用手引き(案)説明動画【第2編 土工編】
https://www.youtube.com/watch?v=r8h3WMlXhSs
3次元計測技術を用いた出来形管理の活用手引き(案)説明動画【第3編 舗装工編】
https://www.youtube.com/watch?v=AJyIuUwi4lE